海外ドラマは、デザインインスピレーションの宝庫です。
今回は、人気海外ドラマ「ダウントンアビー」から、クローリー家の朝食シーンを彩るフラワーアレンジについて、フラワースタイリスト視点で解説したいと思います。
フラワーデザインを勉強したい人への一番のおすすめドラマは何ですか?と聞かれたら、
「ダウントンアビー」と迷いなく答えるでしょう。
シーンの背景に映る、フラワーデザインが王道な美しさな上、
ここまでリアルにお花がたくさん登場するドラマは他にはないからです。
世界中に「ダウントニアン」と呼ばれるドラマのファンがいるほど(私もそのひとり!)
英国貴族のライフスタイルを美しく描いたこのドラマ。
ため息の出るようなお屋敷のインテリア、
衣装の美しさ、
食のキッチンシーンなど、
当時の貴族のライフスタイルをできるだけ忠実に再現していて、
それぞれの分野で、世界中の専門家が解説したり
お料理本まで出ているほど、通好みのドラマなのです。
↓(ダウントンアビーのお料理本、私も持っています。)
なので、フラワースタイリストの視点からもセットの中のフラワーアレンジにも全く手抜きはなし!
食事のシーン、インテリアフラワー、玄関ホールから結婚式のブーケや空間装飾まで、
ご紹介したいお花のシーンは山ほどあるのですが、
ダウントンアビーをご存知でない方は、まずはこちらの10分のまとめ動画をご覧くださいね。
ダウントンアビーのフラワーアレンジは朝食シーンが面白い
このお話の主人公達、クローリー家の朝食シーンは、
お花が特に目立つので、フラワーアレンジの勉強になります。
クローリー家の朝食は、ビュッフェスタイルです。
お食事が並べてある場所にあるフラワーアレンジと、
テーブル花、2種類が必ずあります。
朝はお食事がシンプルで、かつ自然光の中の撮影なので
お花が綺麗に映し出され、存在感があるのです。
ダウントンアビー朝食シーンのフラワーコーディネーション3つのヒント
公式動画の3分40秒あたりをご覧ください。
このクローリー家の朝食のシーンから、お花の色や、コーディネーションを解説します。
- 色合わせは補色を使う
- お花の合わせ方
- 器の使い方
1. 色合わせは補色を使う。
黄色のお花と青紫、赤紫のお花がアレンジされているのが見えると思います。
黄色 x 紫 は補色の関係で、お互いを引き立て合う色です。
黄色いお花は、スイセン。
青紫の粒のお花はムスカリ。
ボルドー色の赤紫のお花は、つぼんだアネモネかもしれません。
この補色をうまく繋いでくれているのは、黄緑です。
柔らかい黄緑の葉は、アスパラの葉か、シダでしょう。
ざっくり、こんな組み合わせですね。
さらに言うと、
春のお花は黄色が多く、自然界にも、黄色 x 紫の組み合わせは存在しています。
パンジーやすみれをよく見ると、お花の中に黄色と紫色、両方を持っていることに気づかれることでしょう。
そう、自然には色合わせのヒントが含まれているのです!
ぜひ早春のお花で、黄色 x 紫の組み合わせを試してみてください。
お花の合わせ方
水仙のような面のあるお花をマスフラワーと言います。
また、ムスカリのようなお花は、ユニークな形をしていてフォームフラワーと言います。
この組み合わせが、フラワーアレンジのメイン、サブとなります。
さらに、間を埋めるお花として、フィラーフラワーという細かいお花がありますが、
今回は、お花の代わりに、ふんわりと柔らかい、アスパラやシダの葉を使っていますね。
器の使い方で、お花の印象が変わる。
朝食シーンの2種類のフラワーアレンジは、
メインとなるお花はほぼ同じですが、印象が違うのは、器でフラワーアレンジの形を違えているからです。
3分44秒あたりの映像、お食事が並んでいるシーンの器はシルバーで、高さがありますね。
柔らかいリーフを使うことにより、下に垂れ下がるようになっています。
この下に下がるスタイルは、花の専門用語では、キャスケード(滝)スタイルと言う型になります。
ここでは、ラフなキャスケードになっています。
そして、お花の背後は壁で、180度お花が見えるような形に作ってあり、3方見のスタイルとなります。
ウェデイングや、パーティのビュッフェスタイルに、参考になりますね。
一方、動画の5分あたりの映像で娘たちが囲むテーブルの上のお花は、シルバーで低めの足がある丸いコンポート型の器にあしらわれています。
丸くアレンジされているので、ラウンドスタイルという、これも典型的なフラワーデザインの型です。
テーブルのお花は、低めにアレンジし、対面での会話の邪魔をしないように、が基本です。
ラウンドは、どこから見ても綺麗に見えるようにアレンジするため、
テーブルセンターに置くお花として、最も使われる型です。
当然、360度の四方見のフラワーアレンジです。
ウェディングのゲストテーブルでも、ポピュラーなスタイルですが、
このようなシルバーの器を使うとお花がナチュラルでもクラシカルにまとまる、良い例です。
ガーデンからお花を摘んで飾る、英国王族・貴族の習慣
お花は、誰が飾っているの?と思いますが、貴族のライフスタイルでは、お花屋さんではなく、メイドさんです。
貴族は、敷地内に農園があり、そこで野菜やお花を育てています。
メイドさんたちがそれを摘んで、日々の食卓にお野菜と一緒に運ぶ、
まさに、現代見直されている「Farm to Table 」畑から、テーブルへが日常で、
健康的なライフスタイルだったのです。
現在の英国王室もお花は王族のお庭からでしたね。
エリザベス女王の国葬のお花もお庭から、チャールズ国王が選んだ花々でした。
英国王室にも愛されているダウントンアビー
英国王室といえば。
キャサリン妃は、かつて、ダウントンアビーの撮影現場に足を運んでいますので、
ダウントンアビーが本物の王室メンバーにも愛されているのがわかります。
また、つい最近では、カミラ王妃が、ダウントンアビーの俳優をクリスマスランチ会に招いたという記事もありました。
現役王族から見ても、ドラマの中の貴族のライフスタイルの描写に違和感はなく、親しみが持てるからではないからではないでしょうか。
だから、と言うわけではありませんが、
2022年の春に公開されたダウントンアビーの映画は(日本では9月)
偶然にも、ストーリーがどこか英国王室と重なって感じた方も多かったのではないでしょうか。
伯爵夫人バイオレットのユーモアあるグラニー(おばあちゃま)像は、
エリザベス女王とは、もちろん身分は全く違うものの、
家族を見守り、次の世代へと繋いでいく姿に共通するものがありました。
ダウントンアビーは、英国貴族の美しいライフスタイルに焦点を置いているので、キャサリン妃が訪問されたということは
もしかしたら、エリザベス女王もご覧になっていたのかしら、などと想像してしまいますね。
フラワーアレンジも、実際の王室でもこんなイメージ?などと想いを巡らせながら作ってみるのも、なんだかワクワクしませんか?
まとめ
以上、フラワースタイリストの私は、セットのお花から何を瞬時に読み取っているのか、
ダウントンアビーからどんなインスピレーションを得ているのか、解説しました。
映像の中の、フラワーアレンジからヒントを得るときには、
色彩(今回は補色)
形の組み合わせ
器の形と材質
置かれている場所
に、注目してみてください。
お花の名前が分からなくても、ヒントは沢山あるのでは、と思います。
今年ほど、英国に注目が集まった年はなかったと感じますが、
英国の伝統的なスタイルに、改めて心惹かれた方も多くいらっしゃることでしょう。
ダウントンアビーは、Amazonプライムでもご覧になれますので、
年末年始のお休みに、ダウントンアビーのフラワーシーンで、
目から心豊かに、学びの時間をお過ごしになるのも良いかもしれません。
まだまだご紹介したいフラワーシーンは沢山あるので、
ダウントンアビーについては、今後も折に触れてシリーズで紹介していこうと思っています。
黄色の水仙や、紫色のチューリップなどをキュッと束ねた、みずみずしい春のブーケを作りませんか?春のお花を束ねるブーケレッスン 新年2023 年、1月27日、28日、二子玉川で開催です。
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